ウイルス活用、革新的で安全性高いがん治療薬 早期実用化へ新会社 鹿児島大大学院・小戝教授が設立、2社が10億円出資

創薬ベンチャーの設立について説明する鹿児島大学大学院の小戝健一郎教授(左)=28日、鹿児島市

 創薬ベンチャーの設立について説明する鹿児島大学大学院の小戝健一郎教授(左)=28日、鹿児島市

小戝健一郎教授

 小戝健一郎教授

 鹿児島大学は28日、ウイルスを活用したがん治療薬の研究開発を進める大学院医歯学総合研究科の小戝(こさい)健一郎教授(60)=遺伝子治療・再生医学分野=が創薬ベンチャーを設立し、県内外の投資会社2社と10億円規模の出資契約を結んだと明らかにした。新会社は3年後に株式上場する計画で、革新的な治療薬の早期承認と実用化を目指す。
 8月設立の新会社は「サーブ・バイオファーマ」。鹿児島銀行系の鹿児島ディベロップメント(鹿児島市)、大和証券グループのDCIパートナーズ(東京)が共同で出資する。「鹿児島大学認定ベンチャー」に認定され、桜ケ丘キャンパス内に本社を構える。
 小戝教授は、ほぼ全てのがん細胞で異常に出現する「サバイビン」という分子に着目。風邪の原因になるアデノウイルスの遺伝子を独自技術で組み換え、サバイビンに反応するようにした「がん治療用ウイルス薬(腫瘍溶解性ウイルス)」を開発した。ウイルスはがん細胞の中だけで増殖し、がん細胞を破壊するため安全性が高いとされている。
 これまで日本医療研究開発機構などの助成を受け、現在は第1弾と位置付ける希少がんの骨軟部腫瘍に対する医師主導治験が最終段階に入っている。今後、別のがんを対象に、さらに機能を向上させた治療薬の研究開発も進めていく方針。
 会見した小戝教授は「(第1弾は)製薬会社の協力を得て早ければ2〜3年で実用化を実現したい。鹿児島から世界の患者に革新的医薬を届け、新産業創出にも貢献したい」と述べた。
 鹿大によると、「鹿児島大学認定ベンチャー」は今回の新会社を含めて11社。認定ベンチャーは大学の施設・設備の有償貸し付け、法人登記上の住所の使用などの支援が受けられる。

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