南九州最大の繁華街・天文館に目立つ空き店舗 のしかかるコロナ融資返済…客足回復も鈍く、物価高も重荷に「100軒以上姿消した」 鹿児島市

image

「テナント募集」の張り紙が出され、空き店舗が目立つ天文館の文化通り=23日、鹿児島市千日町(画像の一部を加工しています)

 鹿児島市天文館でテナント募集の張り紙が目立つ。春以降、新型コロナウイルスの行動制限や飲食店への営業自粛要請はないものの、客足の回復が鈍いからだ。実質無利子・無担保で貸し付ける「コロナ融資」の返済が始まっていることも店側の大きな負担になっている。
 山之口町にある日本料理店「石庵」。店主の伊比禮数利さんの表情はさえない。3年ぶりに行動制限のなかった今夏は流行「第7波」に見舞われた。当日キャンセルが相次ぎ、予約取り消しによる7、8月の損失は500万円以上という。政府系金融機関から昨年受けたコロナ融資の返済が3月に始まった上、物価は上がるばかり。「もう店を閉めようとさえ思う」
 市の調査では、2021年度の天文館地区の総店舗517店に占める空き店舗率は11.8%。調査を始めた00年度以降最も高い。飲食店が軒を連ねる天文館文化通り会の中原寛会長は「コロナ以降100軒以上が姿を消した。客足は戻っていないのに休業要請時にあった協力金などの公的支援が乏しく、息切れ寸前の店は少なくない」と明かす。
 不動産業を営む男性(48)は「家賃を値下げしても空き店舗が埋まらない」とコロナ前と後の変化を語る。コロナ前に設定した家賃を約4割下げても借り手は現れないという。別の不動産業の社長(70)は「繁盛店ですら廃業しているのが現状。客目線では分からないが、内情は相当苦しく、休廃業する店はもっと増える」とみる。
 官民の金融機関が中小企業の資金繰り支援を目的に、コロナ関連の融資を始めたのは20年5月。直後から県内企業の多くが活用した。借り入れの保証人となる県信用保証協会によると、今年6月までに半数の事業者が返済開始を迎え、残りの半数の6割近くが23年度中に返済が始まる。協会の相談窓口には返済延期を求める「条件変更」の相談が増えている。
 協会の川野敏彦会長は「徳俵に足が掛かっているような事業者が多く、来年度は経営支援の正念場になる。条件変更には柔軟に対応しているが、官民金融機関には販路開拓など抜本的な経営改善に向けた支援が求められる」と話す。

コメント