台風14号、上陸した鹿児島で豪雨免れ 背景に微妙なコースのずれ?

仙崎信一2022年9月30日 10時30分

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15~19日の積算雨量を示した地図。鹿児島県本土は宮崎県(右上)に比べ、大雨を示すオレンジや赤色が少ない=鹿児島地方気象台提供

写真・図版

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 今月18日に鹿児島市付近に上陸した台風14号では、台風の特別警報が初めて鹿児島県内に出された。気象庁が最大級の警戒を呼びかけたが、県内では甚大な被害はまぬがれた。予想よりやや東を通ったことで宮崎県のような大雨にならなかったのが一つの要因と、気象台はみている。

 気象庁は経験したことがない暴風などが予想されるとして17日、奄美を除く県内に台風の特別警報を出した。非常に強い勢力のまま18日午後1時半ごろ、屋久島を通過。午後7時ごろ、鹿児島市付近に上陸して薩摩半島を北上した。

 鹿児島地方気象台によると、屋久島を通過した際は強さが「猛烈」から「非常に強い」に下がったものの、屋久島で過去最低気圧となる932・3ヘクトパスカルを観測。鹿児島市にある気象台でも940・6ヘクトパスカルと観測史上2番目に低く、想定に近い勢力を維持したままだった。

 「実際はコースがわずかに東寄りだった」と轟日出男気象情報官。当初は屋久島を通過後、枕崎市付近を通り、熊本県沖に抜けるコースを予想していた。

 台風の東側では湿った東風の影響で大雨が降ると警戒を呼びかけていた。実際、大隅地方や宮崎県では17日ごろから激しい雨が降り始めた。特に宮崎県では15市町村で大雨特別警報が出され、浸水被害や土砂災害が相次いだ。

 大隅地方の総雨量は錦江町田代で465・5ミリ、鹿屋市で395・5ミリと多かったが、宮崎県の多い地域と比べると少なく、薩摩地方は鹿児島市209・5ミリ、薩摩川内市144・0ミリなどとさらに少なかった。

 轟情報官は土砂災害などが少なかったのは台風がやや東寄りに進んだためとし、「もっと西側を通っていたら県内も大雨が降って土砂災害が多発した可能性があった」と指摘した。

 一方、鹿児島市で43・5メートル、錦江町田代で40・7メートル、霧島市牧之原で39・6メートルの最大瞬間風速を観測。鹿児島市では建設中のマンションのクレーンが折れ曲がった。離島では屋久島町で50・9メートル、西之表市で42・8メートルの最大瞬間風速を記録した。

 県のまとめでは、死者・行方不明者はおらず、人的被害は重傷2人、軽傷16人にとどまった。轟情報官は「気象庁や県、市町村などが早めの対策を呼びかけ、住民が対応したため」と話した。県の担当者も「早め早めの避難の呼びかけが功を奏した」としている。

 台風14号に関する県内の被害は、29日現在、住宅の全半壊が4棟、一部破損436棟、床上浸水1棟、床下浸水44棟。道路や河川、港などの被害104カ所、土砂災害15カ所。(仙崎信一)

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