子に迷惑かけたくない…「墓じまい」は親心? 樹木葬、納骨壇…継承しない永代供養のニーズ高まる

花壇を囲むように作られた樹木墓=鹿児島市の新生田上霊園田上霊場(画像の一部を加工しています)

 花壇を囲むように作られた樹木墓=鹿児島市の新生田上霊園田上霊場(画像の一部を加工しています)

 代々の墓を処分したり別の場所に移したりする「墓じまい」や、管理を霊園や寺に委ねる永代供養の納骨堂、合祀(ごうし)墓への関心が、鹿児島県内で高まっている。変わる墓の形の背景には、少子高齢化が進む中、「継ぐ人がいない」「離れて暮らす子どもに苦労をかけたくない」との親の思いなどもあるようだ。
 鹿児島市の60代の男性は、鹿児島市営墓地にあった墓をしまい、今年4月に同市の新生田上霊園中央霊場の「樹木墓」(承継タイプ)に移した。
 これまでの墓は墓地の一番高い位置にあり、「上がるのに苦労し、年々足が遠のいていた」。新たな墓は駐車場からすぐ。木や草花を石板が囲む、明るい雰囲気も気に入っている。「子どもや孫たちも、『ここならお墓参りに行く』と言ってくれる」と笑顔で話す。
■生前に予約
 近年、人気が高まっている墓の形態が、継承しない永代供養だ。
 鹿児島市と姶良市に計4カ所の霊場がある新生田上霊園は、昨年1年間に販売した「墓」のうち、およそ半分が永代供養の希望だった。需要の高まりを受けて、今年5月にも樹木墓や納骨壇計273基を新設。このうち155基を永代供養が占める。
 姶良市のメモリアルパークあいらでも、21年4月にできた樹木葬の第1期69基が1年ほどで完売。昨年9月に2人用55基、今年5月に3~8人用24基が完成した。その多くが永代墓だ。
 堀望美社長によると、「墓じまい」だけでなく、新たにつくる人も永代供養への関心が高い。「子どもに迷惑をかけたくない」と生前に予約する人もいるという。
 永代供養の樹木葬や納骨壇は、一般的な墓の建立に比べると費用は安く、年間の管理費も基本的に不要だ。多くの場合、最後の納骨から一定期間が過ぎると改葬される。新生田上霊園は7年か15年で合祀墓へ移す。メモリアルパークあいらは、15年経過すると樹木葬と同じ敷地内に立つ桜の近くに埋葬する。
■家族以外と
 家族以外の人と一緒に埋葬する、永代の合同供養を選択する人も増えている。
 市営墓地18カ所がある鹿児島市でも、継承者がいない、経済的に墓を持てないという声に応えて、星ケ峯霊園(五ケ別府町)に初の合葬墓の整備を決めた。今月着工し、来年1月に受け入れ予定だ。
 同市内の墓や自宅にお骨を保管する人が対象で、最多で3000柱を埋葬できる。使用状況の推移を見ながら、今後の整備を検討する。
 永代の合同供養は、運営者が半永久的に管理し、家族でなくても誰かが参ってくれる利点がある。一方で原則、遺骨を取り出せないなどの制約もある。契約の際に確認が必要だ。
 新生田上霊園の種子島聡常務理事は「墓石がいいとか、永代供養の納骨堂を選ぶなど、墓へのこだわりや思いはさまざま。時代によって変わるニーズに合わせて多様な形式を提案していきたい」と話している。
■話し合い大切
 墓じまいをする場合は、事前の準備も重要だ。
 県内で、空き家や墓じまいの相談に応じているNPO法人「結の夢来人(むらびと)・絆プロジェクト」村長の有馬法久さんは「関係する親戚やきょうだいで話し合い、費用を含めて意思統一しておくことが大切」と話す。
 「両親が元気なうちに希望を聞いておいたり、墓に入っている先祖のリストを作ったりしておくといい」とアドバイスする。
 メモリアルパークあいらを運営する善照寺(姶良市)の堀裕真住職は「墓じまいは今あるお墓を閉じて終わりではなく、新たな供養の場に移るということ。離れていても故人を思い、手を合わせる気持ちが大切」と語った。

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