新日本科学の本社機能、鹿児島市へUターン 永田会長兼社長「オンライン普及、どこでも仕事できる」 業績アップけん引は「実験動物の自給体制構築」

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新日本科学本社の完成イメージ図。手前の5階建ビルは現在の本店(同社提供)

 新日本科学の永田良一会長兼社長(64)は18日までに南日本新聞社の取材に応じ、現在東京にある本社機能を2023年4月に鹿児島市宮之浦町の本店所在地へ移し、新たな本社ビルを建設すると明らかにした。年内に着工、24年6月完成を目指す。
 医薬品開発支援の同社は近年、新型コロナウイルス関連を含めて国内外からの受注が急伸。22年3月期には過去最高益を計上した。一方で、需要に応えるための設備拡充やスタッフの増員が急務となっている。本社ビル完成後は受託可能な量が現在の1.5倍以上になると見込んでいる。
 新本社ビルは現在の本店ビルに隣接し、鉄筋コンクリート造8階建て2棟を建設。延べ床面積は約1万3000平方メートルで、同時に本店も改装する。総工費は50億円の予定。
 新本社は新薬開発に伴う分析や研究、ITなどの部門を置く。現本社は東京本社として、新規事業や海外展開、経営戦略などを担う。人材の補強も進め、来春は140人を新規採用する予定。その後も年間100人程度を採用するという。
■永田良一会長兼社長に聞く
 鹿児島市へ本社機能を戻すことを明らかにした新日本科学は今春、過去最高益を計上するなど、業績が急上昇している。永田良一会長兼社長(64)に背景や展望を聞いた。
 -2003年1月に東京へ移した本社を、なぜ鹿児島に戻すのか。
 「2018年ごろから医薬品開発や臨床試験などが集中し、受注を1年待ってもらうケースもある。新たな人材や設備、それらを収める建物が必要になり、確保していた土地への建設を決めた。鹿児島でも優秀な人材は採用できている。Zoomなどのオンラインツールが普及し、どこでも仕事ができることも大きい」
 -業績の伸びが著しい。
 「設備投資、人材育成、海外展開といった長い取り組みが結実した。医薬品業界では効率化のため、当社のような医薬品開発業務受託機関(CRO)への外部委託が拡大している。海外からの受託は4割を超え、新型コロナウイルス関連も多い。特にCROで唯一、グループ内で実験動物の自給体制を構築したことが評価された。正確なデータを得るため、40年前から信念を曲げずに進めてきたことだ」
 -今後の展開は。
 「米国の関連会社で開発中の片頭痛の薬は、来年にも承認申請する。鹿児島の企業が初めて開発した新薬となるはずだ。他の子会社ではパーキンソン病の薬の臨床試験が始まった。これらの基礎は、1997年から開発して特許を取得した粉体の経鼻投与技術。鼻粘膜からの吸収で即効性が期待できる。この技術を生かし、ワクチン研究も進めたい」
 -女性活躍企業としても注目される。
 「日本の高齢層に多い『男性でなければならない』という考えが理解できない。米国ではビジネスに性別は関係ない。男女問わず登用する方が効率的だ。当社は女性社員の意見を元に働く環境を整えてきた。『転職する理由がない会社』になれば、社員のモチベーションも業績も上がるはずだ」
◆略歴◆
ながた・りょういち 1958年、鹿児島市生まれ。聖マリアンナ医科大卒。医師、医学博士。91年社長就任、2014年から現職。順天堂大学理事、学校法人ヴェリタス学園(鹿児島市

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