1日1万歩は必要ない? 最新医学でわかった「正しい運動のやり方」とは【医者が教える健康の新常識】

健康であるために、さまざまな健康法を日常的に取り入れている方も多いことでしょう。でも、その健康法は本当に効果的なのでしょうか。日進月歩で研究が進められる医療業界では、これまで常識と信じられていたものが、ある日、180度変わることもあります。

何が本当なのか、最新の常識は何なのか、素人にはなかなかわかりません。そこで今回は、専門の医師たちが新しい健康常識を、最新の知見とともに解説してくれる『医者が教える健康の新常識 ここまで変わった50のこと(宝島社)』から、「生活」に関する新しい“健康常識”をご紹介します。

監修の久保明医師によると、「毎日ではなく、週末だけなど自分に会ったスタイルで運動すればよい」とのこと。無理なく、継続することからはじめましょう。

久保明(くぼ・あきら)
医療法人財団百葉の会 銀座医院 院長補佐・抗加齢センター長。東海大学医学部客員教授。
1979年慶應義塾大学医学部卒業。1988年米国ワシントン州立大学医学部動脈硬化研究部門に留学。帰国後、一貫して予防医療とアンチエイジング医学に取り組む。「高輪メディカルクリニック」を設立し16年間院長を務め、現在は医療法人財団百葉の会 銀座医院など都内で診療を行う。著書に『名医が教える!週に1度食べないだけで体の不調はリセットできる』(日東書院本社)、『人気の「これだけ健康法」が寿命を縮める 老化指標を改善する28のステップ』(講談社)、『「糖化」をふせいで老けない・病まない体になる! 』(PHP研究所)など多数。

大間違い1:1日1万歩で健康生活!

新常識:8000歩でも十分効果あり

実は1日1万歩という目標は、歩数計を作ったメーカーが名付けた商品名から始まっています。アメリカスポーツ医学協会は1日あたり300キロカロリーを消費する運動を推奨しており、成人男性の場合、1万歩で300キロカロリーが消費されるのです。

厚生労働省によれば、日本人の健康維持には1日8000歩が適切だとのこと。米国立がん研究所などの調査でも、歩数が増えるほど年間死亡率は下がりますが、1万歩以上では年間死亡率がほぼ横ばいに。健康維持のためなら、1日8000歩で十分です。
「4000~5000歩でもうつの気分を晴れやかにするという報告もあります」(久保医師)

歩く時間がなかったりあまり歩けない高齢者も、毎日4000~5000歩を歩くだけでも気分が明るくなります。

久保医師comment:一般的には8000歩を目標に、高齢者は4000~5000歩でも効果

歩数と死亡率の関係。1日2000歩の人に比べ、8000歩の人の死亡率はおよそ3分の1。
歩数が増えれば死亡率は下がるが、1万歩以上では死亡率はほとんど変わらない。
出典:Saint-Maurice PF, et al. JAMA. 2020;323(12):1151-1160

大間違い2:朝一番のラジオ体操は健康にいい!

新常識:高齢者にはひざを痛める体操もあり

子どもから大人まで誰でもできるラジオ体操。ラジオ体操の誕生は1928年のこと。それから90年以上も愛されてきた国民のための体操です。高齢者の方にも人気で、放送時間が近づくと神社の境内や公園に集まり、みんなで体操をする光景がよく見られます。

全身を使って行うラジオ体操は、短い時間で体のストレッチと筋力強化ができる優れた体操ですが、上半身中心の運動が多く、下半身の屈伸運動があまり入っていません。その割に跳躍があるため、高齢者は足腰を痛める場合があります。

年をとるとひざの軟骨が減り、関節炎を引き起こします。毎日のラジオ体操で痛みをおしてひざを使うと、ひざの調子を崩すかもしれません。高齢者は跳躍の部分を屈伸に変えるなど自分に合った調整が必要です。また早朝ということで体が完全に目覚める前に、勢いで体を動かしギックリ腰になる人もいます。

習慣的に体を動かすこと自体は良いことなので、自分の体調と相談して、無理なく続けましょう。

久保医師comment:高齢者は足腰を痛めないよう、無理な跳躍は控えましょう

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医者が教える健康の新常識 ここまで変わった50のこと
監修/栗原毅、桑満おさむ、久保明
宝島社 891円

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