日本全国の空き家の数は、25年後には1000万軒を超える

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空き家の増加問題は特に地方で深刻化する Purdue9394/iStock.

<地方での増加は特に深刻で、全住宅の3割から4割が空き家になる地域も>

日本が人口減少の局面に入って久しい。ここ数年、毎年60万人弱人口が減っている。これは鳥取県の人口よりも多い数だ。これが70万人、80万人となり、やがては毎年人口が100万人減る時代となる。これはいかんともしがたい現実で、「縮む」ことを前提とした社会設計をしなければならない。

重要となるのは、空き家の活用だ。人は減っても、ハコは残る。2013年の空き家は819万5600、2018年は848万8600(総務省『住宅土地統計』)。5年間で1.036倍に増えた。この倍率を適用すると、5年後の2023年は879万2075と見積もられ、さらに5年間隔で推し量っていくと2048年には1048万0161となる。2013年から2018年の増加ペースが続くとした場合、この頃には空き家の数が1000万を越える。同じやり方で推測した住宅総数に占める割合は14.1%だ。

地方では空き家の割合はもっと高くなる。<表1>は、鹿児島県の予測結果だ。2013年から2018年の増加倍率を掛けて、5年後の住宅総数と空き家数を推し量っている。分母と分子が今のペースで増えると仮定した場合、どうなるかだ。

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直線的な変化を仮定しただけのシンプルな試算だが、これによると2048年の鹿児島県の住宅数は97万2999、うち空き家は35万4649と見込まれる。空き家の割合は36.4%だ。

県内の住宅の3分の1が空き家。にわかに信じ難いが、実際はもっと高くなるのではないか。人口減少のなか、今と同じペースで住宅が増えるとは考えにくい(減少に転じる可能性もある)。対して分子の空家数は、これから亡くなる人が増えるので増加のスピードが速まると考えられる。四半世紀後の鹿児島県では、住宅の半分近くが空き家になっているかもしれない。

このやり方により、住宅総数に占める空き家の割合を都道府県別に計算してみた。2018年の実測値と2048年の予測値に基づき、20%を超える県に色を付けた地図にすると<図1>のようになる。

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色付きの県は2018年では2県だが、2048年では19に増え、6つの県では30%を超える。岩手県、宮城県、福島県では4割超えになっている。これらの県は、震災により建設された仮設住宅等の影響があるので割り引いて考える必要がある。だが、それとは無関係の西日本の諸県の空き家率も高く出ている。先ほど述べた理由により、実際にはもっと高くなると思われる。

全住宅の3割から4割が空き家。こういう地域も出てくるわけだ。放置しておいたらゴーストタウン化するのは必至。これはまずいと、「家賃は要らないからハウスキーパーとして空き家に住んでください」と頼まれる時代になるかもしれない。黙っていても、家が空から降ってくる。考え方によっては明るい未来展望だ。

空き家は、放置しておくと朽ち果てたり、犯罪の温床になったりと、社会の安全を脅かす危険因子になりかねない。しかし適切に活用されるなら逆だ。若者の「住」の支援に使われてもいい。

人口が減り、住める家が大量に余る時代になる。こういう時代では、ハコを新たに作るのではなく、既存のハコを生かす。持続可能な社会の形成にあたって不可欠な思考転換だろう。

<資料:総務省『住宅土地統計』

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