【詳細解説】「墓じまい」の具体的手順と費用 墓地の管理者に相談、石材店への見積もり、法的手続きなど

墓じまいや改葬を考える場合、具体的にどのように進めればよいのか(写真:イメージマート)

墓じまいや改葬を考える場合、具体的にどのように進めればよいのか(写真:イメージマート)

「故郷にある両親のお墓になかなかお参りができない」「お墓の維持管理を子どもにさせるのは申し訳ない」「自分が死んだら、お墓を継ぐ人がいない」──。こうした思いから、「墓じまい」をする人が増えている。「わが家もできることなら」と考えている人も多いだろう。しかし、「墓じまい」という言葉は知っていても、具体的に何をどうしたらいいのかよくわからないもの。

「墓じまいに慣れている、という人はほとんどいません。ご相談で多いのも、『手順がよくわからない』というものです。一方で、断片的な情報は入っているので、『大変そうだ』という印象が強まって、先送りにしてしまうケースが多いですね」

 そう指摘するのは、お墓に関する相談等を行う「日本仏事ネット」代表で、1級お墓ディレクタ―の寺田良平さんだ。墓じまいの流れと費用について、寺田さんに聞いた。

「改葬」と「墓じまい」の違い

 最初に確認しておきたいのが、自分が希望しているのが本当に「墓じまい」なのか、だ。お墓を整理する手段として「改葬」という方法もある。

「お骨を別の場所に移すのが『改葬』。いわば、お骨のお引っ越しです。一方で『墓じまい』は今あるお墓を更地にすることです」(寺田さん・以下同)

「改葬」だけを行った場合、もともとあったお墓はそのまま維持される。一方、すべてのお骨の改葬をして、墓石も撤去し、お墓が立っていた土地を墓地の管理者に返すとなれば「墓じまい」となる。

「改葬して墓じまいをすることが多いのですが、改葬だけをすることもある」そうで、たとえば、夫を亡くして、とりあえず故郷にある先祖のお墓に納骨させてもらっていたが、新しいお墓の準備ができたのでお骨を移す、といったケースがそれにあたる。

改葬・墓じまいの進め方

【1】墓じまいの方向性を決める

 墓じまいをしようと思ったら、まず必要なのは関係する家族・親族との話し合いだ。

「すでにお墓に関わる人間は自分だけ、というのであれば問題はないでしょう。しかし、兄弟姉妹・親族が関わってくる場合、お墓に対する思いや供養への考え方はそれぞれ異なります。関係者の間で合意ができていることが大切です」

 また、墓じまいをした後、お骨をどこに埋葬するのかによって、手順や費用が変わる。どういう墓じまい・改葬をするのか、その方向性を事前に決めておくことは大切だ。

【2】墓地の管理者へ相談

 次に行うのは墓地の管理者へ相談だ。寺院の墓地であれば住職、公営墓地や民営霊園だったら管理事務所となる。

「あまり多くはありませんが、地域の集落の墓地だと自治会に管理者がいたり、行政が管理していたりケースバイケースです。場合によっては、『管理者がわからない』ということもあるでしょう。その場合は、その墓地がある市区町村役所に相談しましょう」

【3】お骨の引っ越し先の準備

 もとある墓地から出したお骨を次はどこに埋葬するのか、「引っ越し先」を決めておく必要がある。その候補となるのはおもに「霊園・墓地」「納骨堂」「樹木葬」「共同墓」の4つと、あとは「散骨」だ。

「引っ越し先の目処をある程度、決めておかないと、トータルの予算感がつかめないので、先に進めることができません。埋葬の方法や供養の形はさまざまあります。自分たちにとって大切なポイントはなにかを考え、引っ越し先を決めていきましょう」

【4】石材店へ見積もり

 物理的な墓じまいの作業を執り行ってくれるのが石材店だ。墓じまいとなれば墓石を撤去して適切に処分をし、土地を更地にして整備するまでを石材店が担う。また、墓石も一緒に移設し改葬するケースもあり、その場合も石材店の力を借りることになる。

「墓地によって、石材店が指定されているケースと、自由に選べるケースがあります。公的霊園や地域の墓地は自由ですし、寺院はケースバイケースです。民営の霊園は石材店が決められているケースが多いようです」

【5】法的手続きを行う

 改葬を行うには、もともとのお墓がある市区町村に申請をして、「改葬許可証」を発行してもらう必要がある。

「人が亡くなり、火葬すると『火葬証明書』が出ます。この火葬証明書はお骨が誰のものかを示すもので、基本的には納骨の際、墓地の管理者に渡します。先祖代々のお骨を証明するものはすでに残っていませんから、改葬の際、『このお骨は○○さんのお骨ですよ』という証明を、市区町村が代わりに行うのが改葬許可証なのです」

 改葬許可証は、火葬証明書に代わる、いわば「お骨の身分証明」なのだ。

「改装許可の申請用紙は自治体で異なりますが、一般的には、現在の墓地と引っ越し先の墓地の情報、改葬する遺骨について記入し、墓地の管理者に署名・捺印してもらいます。それを必要書類とともに役所に提出すると『改葬許可証』が発行されます」

【6】お骨の取り出し・移動・納骨

 もろもろの手続きが終えたら、いよいよ納骨されているお骨を取り出す。このとき、宗教的儀式を行うことが少なくない。

「宗教によって異なりますが、仏教の場合ですとお墓を閉めるお経を読んでいただく『魂抜き』を行います。そして、石材店に手伝いってもらいながら遺骨を取り出し、新しい納骨先へ速やかに御納骨します」

【7】墓石の撤去・土地の整備

 改葬であれば、【6】で終わりとなるが、「墓じまい」をするのであれば、墓石を撤去と土地の整備を行う。

「お骨をすべて取り出したあとは、墓石を解体撤去して、お墓の建っていた土地を更地に整備して、管理者にお返しします。ただ、これについては石材店にお任せできるので心配はいりません」

墓じまいの費用は「50万~300万円」

 ここまで、改葬・墓じまいの流れを見てきたが、やはり気になるのはその費用だろう。いったい、トータルでいくらかかるのか? 改葬や墓じまいにかかる項目は主に次のとおり。

・撤去費用:石材店への支払い
・改葬許可証:自治体に支払う発行手数料(無料~数百円)
・離檀料:檀家をやめるときの御礼
・お布施:改葬にあたって宗教儀式を行ったときの御礼
・新しい埋葬先にかかる費用

 これらの総額がいくらになるかだが、寺田さんによると「30万~300万円程度」だという。ずいぶんと幅が広いが、どの項目も個別の事情によって変わるため、一概に言えないのだ。

 たとえば、墓じまいをするお墓の大きさや立地によって、墓石を撤去し整地する手間は大きく変わるし、墓石の大きさによってその処分料も変わる。

「また、お布施も離檀料も全国統一の“料金表”があるものではありません。お経をあげていただくお布施は、納骨時にお渡しした額が目安になりますが、離檀料は地域やお寺によって幅があります。そして、いちばん大きいのが次の埋葬先です。新しく寺院にお墓をもつとなれば、やはりトータルの額は上がっていきます」

 お墓に関するポータルサイト「いいお墓」が行った「第14回 お墓の消費者全国実態調査(2023年)」によると、一般的なお墓の平均購入価格は、墓石代や土地利用料、その他諸経費を合わせて151.2万円。一方で、最近人気の樹木葬は、一般墓の半分以下の66.9万円となっている。

 しかも、あくまでこれらは平均値であり、地域によっても変わる。石材店への見積もりや墓地の管理者との話し合いで、確認しながら進めていくのがいちばんだろう。

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