実は違うって知っていましたか?「日本酒」と「清酒」の違いを解説

実は違うって知っていましたか?「日本酒」と「清酒」の違いを解説

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「日本酒」と「清酒」、ふだんはその違いをあまり意識していないかもしれません。一般的には同じ意味合いで使われていますが、厳密にいうと少し異なります。 今回は、「日本酒」と「清酒」、さらに「にごり酒」の定義を順番に紐解きながら、違いを整理していきます。

日本酒とは?

日本酒とは?

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一般的な「日本酒」の定義・起源

「日本酒」とは日本古来のお酒の総称です。「清酒」のほか、どぶろく、合成酒、本みりんなども含めて「日本酒」と呼ぶことができます。
「日本酒」の起源については諸説ありますが、稲作が伝わったとされる縄文時代から弥生時代ころ、すなわち2000年以上も前に生まれたと考えられています。なお、「日本酒」のうち本みりんは、戦国時代に中国から伝わったといわれています。

地理的表示(GI)における「日本酒」の定義

単語としての「日本酒」は少し幅が広い一方で、2015年、国税庁は国レベルの地理的表示として、「原料の米に国内産米のみを使い、かつ、日本国内で製造された清酒のみが、日本酒を独占的に名乗ることができる」と定義づけました。つまり、「日本酒」と同じ製法で造られていたとしても、アメリカやイギリスなど海外で作られたお酒は、「日本酒」と謳うことはできません。
なお、酒類の地理的表示制度として国税庁は、「酒類や農産品において、ある特定の産地ならではの特性(品質、 社会的評価等)が確立されている場合に、当該産地内で生産され、生産基準を満たした商品だけが、その産地名(地域ブランド)を独占的に名乗ることができる制度」と定義しています。
「日本酒」が地理的表示として指定されたことで、海外展開における差別化と、ブランド価値向上が期待されています。

「清酒」とは?

「清酒」とは?

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「清酒」は酒税法上で定義づけられている

「清酒」は、前述のとおり単語としての「日本酒」の一種です。「清酒」の定義は、酒税法により次のように定められています。
◇アルコール度数が22度未満
◇米、米こうじ及び水を原料として発酵させて、濾したもの
◇米、米麹、水および清酒かすやその他政令で定める物品を原料として発酵させて濾したもの
これらの定義から外れるものは、酒税法上は「清酒」とは認められません。
「清酒」の定義において大事なポイントは、米を原料として発酵させたのち、「濾す」という工程を経て造られているかどうかということです。つまり、濾されていないもの(透きとおったお酒の部分と酒粕に分けていないもろみのまま。いわゆるどぶろくなど)は、「清酒」には分類できないのです。
「清酒」とは一体どんなお酒? 今こそはっきりさせよう!

「清酒」の種類

「清酒」は、大きく特定名称酒と普通酒(一般酒)の2つに分けられます。特定名称酒には一定の条件が定められていて、条件から外れるものはすべて普通酒となります。
特定名称酒は、さらに純米酒系、吟醸酒系、本醸造酒系の3タイプ8種類に分類されます。
◇純米酒系:純米酒、特別純米酒、純米吟醸酒、純米大吟醸酒
◇吟醸酒系:吟醸酒、大吟醸酒、
◇本醸造酒系:本醸造酒、特別本醸造酒
特定名称酒それぞれの大きな違いは、原料である米の精米歩合の違いによるもの。精米歩合の条件は以下のように規定されています。
◇精米歩合50%以下:大吟醸酒、純米大吟醸酒
◇精米歩合60%以下:特別純米酒(※)、純米吟醸酒、吟醸酒、特別本醸造酒(※)
◇精米歩合70%以下:本醸造酒、普通酒
◇精米歩合の規定なし:純米酒
なお、純米酒系以外の吟醸酒、大吟醸酒、本醸造酒、特別本醸造酒には、10%以下の醸造アルコールの添加が認められています。
(※)特別純米酒、特別本醸造酒の精米歩合は60%以下、または特別な醸造方法と定義されています。
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にごり酒は清酒に含まれるか?

にごり酒は清酒に含まれるか?

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「にごり酒」は「清酒」?

「にごり酒」とは、白い濁りのある「日本酒」の総称です。一般的には粗めに濾して造られるため、濁りがあります。この「にごり酒」は「清酒」に含まれるのでしょうか。
前述したとおり、「清酒」は酒税法で「濾す」という工程を経て造られたものと定義されています。「清酒」という文字のイメージから「澄んでいるお酒」をイメージする人もいるかもしれませんが、濾して造られたものは濁りがあってもなくても「清酒」です。つまり、濾して造られている「にごり酒」は「清酒」となります。
なお、「清酒」に含まれる「にごり酒」には、おもに以下のような種類があります。
◇にごり酒
おりが混ざってにごりのある清酒。
◇うすにごり
細かなおりがお酒に混じった、比較的にごりの度合いが少ない清酒。
◇おりがらみ
搾ったあとにろ過やおり引きをせずに、おりごと瓶詰した清酒。(うすにごりよりにごりが少なく、かすかににごっている程度)。
◇活性にごり・スパークリング日本酒
火入れをせずに酵母が生きた状態で瓶詰めされた発泡性のある清酒。
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「どぶろく」は「清酒」にあらず

白濁した「にごり酒」として真っ先に想い浮かべる人も多い「どぶろく」。「どぶろく」は、「清酒」同様、米、米麹、水を原料として造られますが、濾さずに造られるため「清酒」ではありません。
また、漢字で「濁酒」と書く「どぶろく」は、「にごり酒」の代表格のような存在として見なされていますが、「にごり酒」は粗めでも濾して造られるのに対し、「どぶろく」は濾さずに造られるため、別物と捉えられることもあります。
それから、「どぶろく」は、酒税法では「日本酒」ではなく、醸造酒類の「その他醸造酒」に分類されています。
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「日本酒」と「清酒」の違い、そして「にごり酒」は「清酒」なのか否かという点についてうまく整理できたでしょうか。改めてそれぞれの定義を知ると、豆知識として誰かに話したくなりますね。

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