廃棄の竹くずから黒色インク 鹿児島の業者ら開発、再資源化成功

竹くずを活用して完成したバンブーインキ

竹くずを活用して完成したバンブーインキ

 鹿児島県内の印刷業者でつくる協業組合「ユニカラー」(同県日置市)は、県内外の企業と協力して、竹を使った黒インクを開発した。竹を原料にした「竹紙」の製造過程で生じ、これまで廃棄されていた竹くずを再資源化することで、持続可能な社会の実現に役立てる狙いだ。

 「廃棄される竹くずをどうにかできないか、ずっと考えていた」。ユニカラーでインク開発に携わった生野忠男営業部長(56)は振り返る。同社は中越パルプ工業川内工場(同県薩摩川内市)が製造する竹紙でストローなどを開発。その過程で出る竹くずの扱いに頭を悩ませてきた。

 竹紙製造では、まず竹を粉砕機で細かなチップに加工。この際、約40トンの竹チップを作るのに約600キロの竹くずが生じていたという。これらを有効活用しようと、県内の竹加工業者に「炭化」を依頼。黒い竹炭を細かくし、インクの顔料に応用した。

炭化した竹くず

炭化した竹くず

 インクとしての製品化に向けては、植物由来のボタニカルインキなどを製造する「サカタインクス」(大阪市)が協力。同社が顔料をもとに黒さを保ちながらも色落ちしない「バンブーインキ」を完成させた。竹を含有させることで石油を使う割合を減らし、CO2削減につながるという。

 インク内に含まれる植物由来成分は現在のところ約20%。1月末からこのインク販売するサカタインクスの担当者は「今やインクも地球規模での環境対応が求められている」と話す。

 林野庁によると、鹿児島県の竹林面積は約1万8000ヘクタール(2017年時点)で国内一を誇る。しかし、プラスチック製品の普及で、近年は竹製品の需要は低迷。竹林所有者の高齢化もあり、県によると、22年にはさらに約2000ヘクタール拡大している。

鹿児島県内にある竹林。一部の竹は倒れたまま放置されている=鹿児島県で2023年3月20日、宗岡敬介撮影拡大

鹿児島県内にある竹林。一部の竹は倒れたまま放置されている=鹿児島県で2023年3月20日、宗岡敬介撮影

 その一方で問題となっているのが「放置竹林」だ。長年放置されたり、増えすぎてしまったりして、厄介者にもなっていた。竹は浅く根を張るため、管理されていない竹林が広がれば各地で土砂災害の危険性も高まる。

 今回のバンブーインキの普及が進めば、竹の付加価値が高まり、放置竹林の問題解決も期待される。ユニカラーの岩重昌勝理事長(62)は「竹くずが再利用され、世界中の印刷にインク使うことができれば循環型社会が実現できる」と語り、インクのさらなる可能性に期待をにじませる。

 問い合わせはユニカラーの生野営業部長(099・813・7213)。【宗岡敬介】

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