植物なのに光合成しないギンリョウソウ 鹿児島で薄紅色の新種発見

新種と確認されたキリシマギンリョウソウ=宮崎県総合博物館・黒木秀一さん提供

新種と確認されたキリシマギンリョウソウ=宮崎県総合博物館・黒木秀一さん提供

 光合成をしないツツジ科植物「ギンリョウソウ」のうち、鹿児島県霧島市周辺などに分布する個体は新種だったことを突き止めたと、神戸大、東北大などの研究チームが30日付の日本植物学会誌「ジャーナル・オブ・プラント・リサーチ」電子版で発表した。薄紅色のガラス細工のような見た目で、チームは発見地にちなみ、和名は「キリシマギンリョウソウ」と命名した。

 一般的な植物は葉緑体を持ち、光をエネルギー源にして有機物を作る「光合成」をする。一方、進化の過程で菌類に寄生し、菌類から養分を奪えるようになったことで光合成をやめたギンリョウソウのような植物も存在する。

 ギンリョウソウは花びらなどが透明や白色で、がくは2、3枚。世界中に分布するが、その仲間は1種だけと考えられてきた。霧島周辺では以前から、薄紅色で、がくも4~11枚と多い個体の存在が知られていたが、一般的なギンリョウソウとその他の特徴が非常に似ていたため、新種かどうかの判断が難しかった。

 チームは約20年かけて、国内外でギンリョウソウとみられる植物数百株を収集し、寄生する菌類などを分析した。その結果、霧島周辺の個体は一般的なギンリョウソウと色が違うだけでなく、開花時期や寄生する菌類も異なっていた。さらにDNA分析で、進化の過程でギンリョウソウから枝分かれした別の種だと結論づけた。

 チームの末次健司・神戸大教授(植物生態学)は「ギンリョウソウは『ありふれた種』だと思われてきたが、キリシマギンリョウソウは個体数が少なく、絶滅の危機にひんしている可能性がある。新種と特定したことで、保全の重要性が周知されるようになるのではないか」と話す。【垂水友里香】

コメント