焼酎「百年の孤独」の酒蔵が手掛けるジャパニーズウイスキー 地元産にこだわり世界を見据える

今、日本で生産されたいわゆる「ジャパニーズウイスキー」が、海外で高い評価を受けています。
輸出量も年々増えている国産ウイスキーですが、宮崎県内の酒蔵も世界を見据えてウイスキーづくりを本格化させています。

「百年の孤独」の酒蔵が手掛ける蒸留所

清流の音が響く木城町の尾鈴山。

その奥深くにあるのが「尾鈴山蒸留所」です。
この酒蔵を手掛けるのは、本格焼酎「百年の孤独」でも有名な黒木本店の黒木信作社長。

おととし、県内で初めてウイスキーを商品化させました。
(尾鈴山蒸留所 黒木信作社長)
「今までは本格焼酎でしたけども、新たにウイスキーの視点も取り入れて、もっと自由な発想でいろんなお酒を作って、この土地で表現していきたいという思いが出てきた」
財務省貿易統計によりますと、国産ウイスキーの輸出量は年々増加していて、去年は461億円と前の年のおよそ1.7倍と急増。

日本産の「ジャパニーズウイスキー」に今、世界から熱い視線が注がれています。

地元へのこだわりが詰まったウイスキー

こうしたなか、尾鈴山蒸留所が手掛けるウイスキーは、いたるところにこだわりが詰め込まれています。
国産ウイスキーの原料となる麦は輸入に頼ることがほとんどですが、「尾鈴山蒸留所」では高鍋町にある自社農場で栽培した大麦など県産の麦のみを使用しています。

そしてウイスキーづくりには焼酎づくりの技術もいかされています。
(尾鈴山蒸留所 黒木信作社長)
「私たちは麹技術を麦芽づくりに応用して、手仕事でモルティング(麦芽にする加工)を行っている。
ここで実際、直接手で触れながら麹同様に麦の成長によって発芽していくと熱を持つので、(温度が)上がり過ぎないようにしたり、発芽のスピードが遅くて冷たいものは寄せてあげて温度が上がりやすくしたり」

さらに発酵に使う木桶も飫肥杉を使用。
その後、発酵したもろみを蒸留する工程にもこだわりがあります。
(尾鈴山蒸留所 黒木信作社長)
「ウチの場合、普通はやらないが、1回目の蒸留はあえて焼酎で使ってきた違う蒸留器でより重たい蒸留酒を作って、2回目でこの銅釜を使うという…ちょっと特殊なことを…」
そして、熟成させるたるにも県内産の桜や栗の木が使われていて、地元へのこだわりが詰まったウイスキーが出来上がります。

「オスズモルト」2種類のウイスキー

尾鈴山蒸留所が、現在、展開しているのは2種類のウイスキー。
ひとつは、熟成させる前の無色透明の「オスズモルト ニューメイク」。

そして、もうひとつが、去年から発売している18か月以上熟成させた琥珀色の「オスズモルト ニューボーン」です。

(三浦功将キャスター)
「(試飲)ものすごく香りが芳醇な感じ。華やかさみたいな香りも飲んでいて伝わってきますね」
(三浦功将キャスター)
「何かおすすめの飲み方ってあるんですか?」
(尾鈴山蒸留所 黒木信作社長)
「まず初めて飲まれる方には、少しずつ水を足していって香りを開かせていただきたいですけど、あまりお酒が強くない方には、この時期ですとハイボールで。ソーダで割って薄めてもしっかり香りと個性は残るので…」

今年の年末には販売も本格化

今年の年末にはウイスキーの国際基準とされる熟成期間の3年が経過。販売も本格化します。
(尾鈴山蒸留所 黒木信作社長)
「この宮崎という土地が本当に豊かなので、ウイスキーも焼酎もお酒のジャンルを問わず、おいしいご飯やお酒を世界中の人が飲みに来てくれるような、そういったことが自分の夢ですね」

こだわりの詰まったジャパニーズウイスキー。世界の市場を見据えた展開が始まります。

(スタジオ)
日本のウィスキーは、いま、海外でも大人気なのですが、人気だからと言って、増産してすぐ出荷できるものではありません。
本編中にもありましたが、3年間は寝かさなければならない。その間はずっと在庫を抱えていて、1円の利益にもならないのです。
普通の株式会社ならば、単年度に少しずつでも利益を出さなければなりませんから、これは難しいことでもあります。
ですから、黒木さんは何十年か先もこの土地でしっかりと腰を据えて、やっていくのだという覚悟があるということが、このウィスキーづくりへの進出を見て感じます。

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