猛毒ダイオキシン含む除草剤 全国に埋設26トン、最多の県には6.2トン 撤去への道のり遠く…劣化や大雨で流出のリスク

2022/06/14 07:30

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ダイオキシンを含む除草剤が埋められた現場=6日、屋久島町宮之浦

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鹿児島県内の除草剤の埋設地と量

 全国の国有林にダイオキシンを含む除草剤が埋設された問題で、林野庁が撤去に向けてかじを切った。鹿児島県は埋設量が約6.2トンと全国最多だが、撤去は先行調査した熊本など県外が優先で、着手時期は見通せない。埋設から半世紀。劣化や大雨による流出の危険性を専門家は指摘する。
 6日、屋久島町宮之浦の「憩いの森公園」。シイやシダが茂る遊歩道を進むと、道沿いに「薬剤(2.4.5-T)が埋めてあります。立ち入らないで下さい」と書かれた看板が出てきた。一帯は細いロープで囲われている。除草剤が眠る埋設地だ。周辺には住宅も点在する。
 同町の埋設量は3825キロで、岩手県雫石町に続き全国2番目。「世界遺産の島にこんなものが埋められているのを住民もあまり知らない」。案内してくれた真辺真紀町議は語る。
 除草剤はかつて、林野庁が国有林の下草処理に使っていた。猛毒のダイオキシンを含むことが判明し、1971年に使用を中止した。約6割はメーカーに返品、残りはダイオキシンが吸着しやすい土とセメントを混ぜ合わせ、72年ごろまでに埋設処分した。
 総量は15道県で約26トン。県内は屋久島、湧水、伊佐など5市町に埋設されている。環境への目立った影響は確認されていない。
■方針転換
 これまで林野庁は、除草剤に占める「2.4.5-T系」の有効成分は1.3%程度で、含有するダイオキシンは「極めて少なく、水にも溶けにくい」と説明。年2回の目視点検や周辺水質調査を基に「地中に安定してとどまっている」として撤去に消極的だった。
 しかし、近年は豪雨災害が多発し、埋設自治体から撤去の要望が相次いだ。これを受け、同庁は昨年度、全国4カ所で撤去方法を調査。現地で飛散防止のテントを張り、専用施設で高温燃焼すれば無害化できることが分かり、撤去する方針に転換した。
 今年4月下旬には鹿児島県内5市町の首長らが同庁を訪れ、環境調査や撤去を求める要望書を提出。荒木耕治屋久島町長は「負の遺産を残さぬよう、一日も早く対応して」と話す。
■劣化の危険性懸念
 撤去方針は決まったものの、実現へ道のりは遠い。
 林野庁によると、先行地域では本年度、埋設地の土壌に除草剤成分が漏れていないかを調べる。それを基に土壌の掘削範囲などを決め、撤去が始まるのは来年度以降。その他の地域は、先行地域の結果を見ながら個別に調査・検討する。
 離島の屋久島は、島外搬出になった場合のコスト面や運送中の安全確保などの課題も出てくる可能性がある。同庁は「埋設地ごとに状況が異なり、鹿児島での着手は未定」と説明する。
 目視点検を続けているとはいえ、埋設から50年が経過した地中の状況が分からない点は同庁も認める。除草剤問題に詳しい明星大の田中修三名誉教授(水土壌環境学)は「土と混ぜた影響でコンクリートの強度が十分でない可能性がある」と指摘。埋設地から約1キロの場所で豪雨による土砂崩れが起きた事例もあったとし、「埋設量が多い鹿児島も早急に撤去を進めるべきだ」と話した。

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