高さ34メートル!存在感放った謎の塔なぜ解体?担当者を直撃 鹿児島・鹿屋市

鹿児島・鹿屋市の団地でひときわ目立つ、高さ約34メートルの塔。市民はもちろん、鹿屋を訪れた多くの人が目にしたであろうこの塔が、役目を終え解体された。塔は何のために建てられ、なぜ解体されたのだろうか。

市民になじみ深い、存在感を放つ塔

2023年10月。鹿屋市郊外の国道269号を走ると目の前に現れる、高さ約34メートルの塔。鹿屋市の中ではひときわ高く、独特なデザインも目を引く。

近くのラーメン店店主:
鹿児島市内とかに遊びに行き、帰ってきてあの塔を見たら「ああ、鹿屋に帰ってきたなあ」という感じでした。そういうシンボル的なところがありました

一方、鹿屋市内のカフェでは、塔のフォトグラフがおしゃれな空間を演出していた。

どこか懐かしいようで、最先端なたたずまいの塔。いつも近くにあるのが当たり前だった。

カフェの店員や客は、「なじみがありすぎた。毎日通る道なので」、「あそこを通れば、ある。この辺には高い建物はないから。私も隣町の垂水で育ったので鹿屋に行くと、あ、来たなと(感じた)。高い建物もなく目立っていたので」と話した。

しかし、塔の役割を知らなかった人が多いようで…。

市民からは、「防火のためなんですかね?そんな知識しかないです。あるのが当然で何も違和感がなかったもんですから」、「広報誌だったかな?水関係のものだったかな?それは見たんですけど。水関係のかな?としか認識してなかったです」といった声が聞かれた。

塔の役割を担当者に聞くと…

団地を所有する鹿屋市の担当者にその役割をズバリ聞いてみた。

鹿屋市建築住宅課・岩下栄一郎課長:
平和住宅の全体の住戸に水を送る施設なんですが、建設当時は水圧が低く5階まで水が届かなかったため、高い所に水をためて各住戸に送るシステムになっていました

塔の正体は、隣接する5階建ての団地へ水を供給するための給水塔だった。

今回特別に、中を見せてもらった。

岩下課長によると、壁の奥が水槽になっていて120トンもの水がたまっているという。その水を、ポンプで頂上の水槽に送っているのだ。

建設された40年前は上水道の水圧が低く水が団地の5階まで届かなかったため、団地よりも高い塔の球体部分に水をため、そこからの水圧で各家庭に水を送っていた。

土台部分は今後も活用される

34メートルという高さは、一般的な建物だと8階建てに相当する。
建設された当時は、鹿屋で一番高い構造物だった。

しかし、この方式だと点検や修繕などに費用がかかるうえ、停電時は断水してしまう。さらに上水道の水圧も十分に高くなったため、給水塔は2021年度にその役目を終えた。

近くで見ると、さびや塗装のはがれが目立つ。このまま保存するにしても、塗装などの費用がかかることから、鹿屋市は塔の撤去を決断した。

岩下栄一郎課長は「鹿屋市街地の西の玄関口として非常に景観上よくないとご意見をいただきましたので」と、解体に至る経緯を話した。

12月7日。
再び現場を訪れると、土台を残し給水塔は完全に姿を消していた。

塔に正式な名称はなかったが、担当者は「平和団地の給水塔」と呼んでいた。

多くの市民にとって当たり前だった風景は、なくなってしまった。
ちなみに、土台部分は防火水槽として今後も活用されるという。

給水塔の記憶は、多くの人々の心に残り続けるに違いない。

(鹿児島テレビ)

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