「年賀状は出しません」世代を超え企業にも、年始あいさつの伝統はSNSなどで続く

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 年賀はがきの発行枚数が年々、減少している。「年賀状じまい」が世代を超えて広がり、取引先への送付を廃止する企業も目立つ。一方、SNSで年賀のあいさつをする人も多く、長年の文化は形を変えつつある。

広がる「年賀状じまい」発行3割に 

 滋賀県長浜市の会社経営、辻田新也さん(33)は、来年の正月から年賀状を出さないつもりだ。「準備が大変。LINEなら簡単に送れて、すぐに返信がくる。日頃の感謝を伝えるツールとして優れている」と話す。

 年賀状の習慣は平安時代に遡るとされ、明治時代に郵便制度が始まると庶民にも定着した。1949年にお年玉くじ付き年賀はがきが登場。2003年度(04年用)の発行枚数は44億5936万枚と過去最高を記録した。その後は減少に転じ、今年度は当初発行ベースで14億4000万枚とピーク時の32%に落ち込んだ。日本郵便の光山実郵便・物流事業企画部担当部長は「年賀はがきに親しんできた世代の人口が減っているほか、『年賀状じまい』の広がりも大きい」と話す。

 高齢者の「終活」が注目され始めたのは2010年頃。その一環として年賀状じまいにも関心が集まり、現役世代にも広まっていった。パイロットコーポレーション(東京)が、22年11~12月に20~60代のビジネスパーソン405人にアンケートしたところ、49%が「年賀状を出さない」と回答。理由(複数回答)は「LINE等メッセージアプリで代用」が69%と最多、「準備が面倒」が52%で続いた。

 ネットで年賀状印刷を受注しているアーツ(大阪)は昨年から、「年賀状じまい」用の文面を用意した。「将来的に受注を減らす可能性があるが、時代の流れは止められない」という。

家族写真撮れず

 印刷会社に長年勤務している年賀状研究家の高尾均さんによると、コロナ禍を境にして、写真を配した年賀状の落ち込みが特に激しいという。「旅行など家族イベントの写真が撮れなかったため、自然消滅的に年賀状をやめてしまったケースもある」と話す。最近は、「幸せそうな家族写真=自慢」とする「年賀状マウント」が話題になり、出すかどうかで気疲れする人もいるようだ。

 年賀状をやめる企業も増えている。ソフトバンクグループ(東京)や富士通(同)は昨年、SDGs(持続可能な開発目標)の観点から、年賀状を含む紙のあいさつ状を廃止した。

 第一生命経済研究所(同)の宮木由貴子主席研究員によると、欧米でもクリスマスカードなどの郵便取り扱いが落ち込んでいるという。「手間とコストをかけ、昔からの慣習を続けるのか問われている」と指摘する。

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