僕らにとってあまりにも身近な「電話番号」。数字のみで成り立つ、いわば電話の宛先です。
この電話番号、実は過去から現在まで、あらゆる合理性や今後の需要を考えた上で、さまざまな決定がなされてきました。
たくさんの知恵が集約された電話番号。その合理性や歴史を知ってみませんか？ 今回は電話番号を管理する総務省に聞いてみましょう。
総務省の総合通信基盤局 電気通信事業部 電気通信技術システム課 番号企画室 室長の安藤良将さんと、課長補佐の林祐二郎さんに「電話番号のひみつ」を伺いました。
市外局番は「北から南」の順に並ぶ
まず、電話番号ってどんな仕組みでできているんですか？
たとえば、総務省の代表電話番号は03-5253-5111ですが、最初の「0」は国内プレフィックスで、国内通話を示す合図です。携帯電話の先頭の「0」も一緒ですね。
（筆者作成）
わずか1文字で判断できるわけですね。
それに続く「3」は市外局番。総務省が地域ごとに市外局番を定めていて、1桁めは北から南に行くにつれて数字が大きくなっています。
（筆者作成）
上から並べたのは、わかりやすくするためですか？
そうだと思います。「地元にこの番号がほしい」などご要望はいろいろあったと思いますが、北から南へ機械的に割り振ったと推測されます。
市外局番の次は市内局番ですね。それにしても、市外局番と市内局番の長さが地域によってだいぶ違いますが、なぜでしょうか？
市外局番も市内局番も、地域によって1〜4桁とバラつきがある
まず、利用者の利便性のためには、市内局番は短いほうがいいんですね。
市内通話ならば「0＋市外局番」を省略できるので、打つ桁数は短いほうが便利ですもんね。
ただし、その地域で電話番号がたくさん必要な場合は、市内局番を長くして、代わりに市外局番を短くします。
市内局番の桁数を増やせば、その地域で使える番号が増えるわけですね。ちなみに、住民が急に増えたらどうなるんですか？
究極には、かつての東京03番号のように「桁増し」しますが、対応する住民の負担も大きいので、よくやるのは「市外局番を1つ、市内局番にズラす」です。
ああ、ときどきありますね！
それにより、市内局番の1桁目に使えなかった国内通話を示す「0」と、緊急通報や付加サービスに使う「1」が、市内局番2桁目になるため使えるようになります。市外局番からかける番号は変わらないのに、電話番号が20万通り増えるんです。
たったひとつの冴えたやりかた！
（筆者作成）
末尾4桁の加入者番号は、基本的に事業者が選びます。
勝手に割り振っていいんですね。
ただ、番号は公平かつ効率的な利用が大原則なので、基本は空いている番号を頭から申し込みに合わせてふっていくはずです。
なるほど……携帯電話の場合はどうなりますか？
先頭は090、080、070の3つ。さらに次の3桁は、事業者の申請に基づき、事業者ごとに管理しやすいように総務省が割り振っています。
（筆者作成）
固定電話と違い、地域ごとに割り振る基準などはないんですね。
こちらも下5桁は事業者側が利用者に割り振ります。「下5桁は事業者が決めて、それより上は総務省が決める」ので、固定電話とほぼ同じ構造ですね。
携帯電話番号が「090～」になったワケは誤ダイヤル防止
1999年、携帯電話は10桁を11桁に増やしていますよね。そのときに統一された番号が「090」だったのはなぜですか？
10桁時代の番号のかけ違いを防ぐ目的もあったようです。
かけ間違い？
すでに広く使われていた010、030、080を11桁化すると、「既存番号＋1桁の誤ダイヤル」で他人に繋がってしまうなどの混乱を避けるため、未使用であった090に統一したんです。
考えてみると、そうか！
桁を増やすには社会的な影響が及ぶとされますが、混乱を抑制するためにどんな施策を行いましたか。
桁増しの仕方も、わかりやすく移行できる設計を心がけました。既存の番号の「0X0」のXの番号を090の次の番号として加えるだけでOKにしたんです。
![[https://www.soumu.go.jp/main_sosiki/joho_tsusin/whatsnew/telecom_service/ts98-1.html （当時の告知ページより）]](https://img.king.mineo.jp/system/magazine_section_images/images/000/001/306/983/L_image.jpg?1689839397)
これ、よくできていますね……！ 実質、最初の「090」さえ覚えればいいわけですから。
空白の時間「1月1日午前2時」に10桁→11桁化
携帯電話が10→11桁になる当時、CMもたくさん流れましたね。「♪携帯、PHS、11桁～」のふしは今でも歌えます。
関係会社においては、ダイレクトメールなどによる利用者への周知および、変更後の誤ダイヤルへのアナウンス接続による案内などを徹底しました。
11桁に切り替わったのはいつですか？
1月1日の午前2時です。
なぜその時間を選んだんですか？
新年が明けた24時の時点ではみんな「あけおめメール」を送ったり、電話したりするので、トラフィックがとても多いんです。ただ、その時間を過ぎると、1年の中でもかなりトラフィックが少ない時間帯のようでして。
空白の時間が！？
なのでわかりやすい1月1日で、中途半端な「2時」になったようです。
「1で始まる3桁特番」廃止ラッシュは将来のため
ちなみに1で始まる3桁の特番（1XY番号）が、近年続々と廃止になっているのはなぜですか。
【2015年に総務省が廃止した3桁特番のサービス】
1XY番号は100番号しかない希少で有限な番号です。利用者がいなくて今後の利用予定もない電話番号は削除して、将来の新たなサービスのためにストックします。
2000年からはじまった、海の事件・事故を通報する「118」
使う人が減った番号などが廃止に？
はい。ただし強制的にやめさせるのではなく、事業者さんが続けたい場合は継続になります。
ちなみに、1XY番号って利用料も高いんですか？
番号の利用料はありません。電話をかけること自体は有料のものもありますが。
ちなみに、ゴロ合わせができる電話番号はやはり覚えやすいですね。児童相談ダイヤルの「189（いち早く）」とかは代表例ですが、ほかにありますか？
消費者ホットラインの「いやや（188）」もすごくわかりやすいですし、番号非通知サービスの「嫌よ（184）」も非常に覚えやすいですよね。
いろいろとありますね。それ、総務省で考えているんですか？
サービス提供者側が考えたと思います。そういう「この語呂合わせ番号だと覚えやすいので」という要望も汲んで、我々がいろいろ勘案しながら決めます。
「020」が100億通り以上に増えたワケ
新たに「020」がデータ通信用の電話番号に解放されましたが、なぜ020が使われたんですか？
人手を介さず機械同士が通信を行うM2M（Machine to Machine）などと、従来の携帯電話やPHSの番号とを識別するため、それまでの090・080・070と離れた番号帯になりました。
（筆者作成）
なぜ識別する必要があったんですか？
元々090などをM2M用にも使っていたんですが、IoTの世界はつなぐものが激増しますので、090だとすぐ足りなくなります。さらに090は携帯の番号として一定の認知がなされており、有限希少なので、新しい番号を作ったと聞いています。
しかも、2019年から「0200」ではじまる14桁の電話番号が生まれて、100億通り以上になったんでしたっけ……？
M2Mで、機械と機械が通信するための番号なのでたくさん必要です。
そもそも電話をかけないのに、なぜ電話番号が必要なんですか？
電話番号は人間が電話をかけるときだけではなく、通信端末の識別にも使われるからです。
電話番号をなくす議論は「ない」！？
「将来的に電話番号がなくなって、よりわかりやすい識別子ができるのではないか」なんて意見も聞きます。どう思われますか？
絶対ないとは言い切れませんが、私が生きてるうちに出てくるかどうかもわかりません。
現時点では「このまま電話番号で継続する」と思われますか？
電話番号って、国際機関のITU（国際電気通信連合）で決まっていて。なので、変えるなら国際標準から全部作り直さなきゃいけないんですよ。
世界標準になるくらい、どこでも使える仕組みなんですね。
10数桁の番号を覚えれば世界中で通信できるのは、電話番号ならではです。
言葉は国々で違いますけど、数字は世界中で通じますからね。この合理性を覆す仕組みはなかなか想像しにくいです。
電話番号のあり方も変化していくと思いますし、見えないところで電話番号も進化していくと思ってくだされば。
通話からデータ通信が多くなっても使われ続けるわけですし、これからも電話番号に活躍してもらいましょうかね！
編集：ノオト
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