築10年のマイホームオーナーが語る「住宅用太陽光発電パネル」の設置に必要な「覚悟」とは?

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脱炭素化やレジリエンス向上を加速させるための施策が検討されている昨今、東京都が2025年4月から「太陽光パネル設置義務化」の施行を決めた。すでにマイホームを所有している人や近い将来購入を検討している人は、設置費用の捻出や従来の物件価格が太陽光パネル設置義務化によって上昇する可能性があることに不安を抱く人が大半ではないだろうか。
事実、都内で築10年のマイホームを保有するAさん(41歳)によると、住宅用太陽光発電パネルを設置するときには、ある程度の「覚悟」が必要だという。

執筆者:FINANCIAL FIELD編集部

売電で大きな金額を稼ぐのは難しい

「10年前はお得感が多くて魅力的だったんですけどね……」と語るAさん。経済産業省が公表する売電価格推移を見ると、10年ほど前の2012年の太陽光売電価格は10キロワット未満で1キロワットあたり42円であったのに対し、2021年は19円までに下落。売電価格は半額以下になっている。
10年間の固定買取価格制度(FIT)が適用されていることで、10年間の売電価格は保証されていたが、10年を過ぎると売電価格が半額近くまで下落してしまうというから驚きだ。

太陽光発電の設置費用は100万円を超える

経済産業省の調達価格等算定委員会の報告によると、2022年の太陽光発電設置価格の相場は1キロワットあたり25万9000円、設置容量が5.00キロワットとすると129万5000万円が目安となっている。
太陽光発電の設置費用が高額になるうえ、売電価格が年々下落していくのでは投資するメリットは低いといえるのではないだろうか。

デメリットを受け入れる覚悟

「太陽光発電はメンテナンスフリーだと聞いていたのですが、実際、定期的なメンテナンスは必要でした。完全にリサーチ不足でしたね」とAさんは言う。
太陽光発電パネルを設置し8年ほど経過したとき、発電量の低下が起こった。原因は太陽光発電パネルの表面に積もった汚れだったのだ。実際、経済産業省では、太陽光発電パネルの汚れや破損、機器の故障などがないことを確認するため、4年に一度の定期点検を経済産業省は推奨している。
「幸い、そのときはパネルの清掃と点検のみで交換は必要なかったが、定期的にメンテナンスが必要だと知っていれば、定期的にメンテナンスをしていたのに……」
と不満を漏らしていた。また、パワーコンディショナーは15年前後で交換する必要があるとされているため、設置から10年を超えたあたりから交換の検討をすることになる。費用面ではランニングコストを積み立てておく必要があるのではないだろうか。

反射光が原因で近隣トラブル

「太陽光発電パネルを設置してしばらくすると、近隣の住民からクレームがあったんですよ。反射光で時間帯によってまぶしいとか、差し込む光で暑いとか……」
太陽光発電パネルの設置後に近隣トラブルが起こる可能性は少なくはない。太陽光発電パネルの設置された方角を確認すると、Aさんの太陽光発電パネルは「北側」に設置されていた。
依頼した施工会社にクレームのことを相談したところ「南側に設置すると反射光は上空に逃げるため近隣に反射しないが、北側に設置すると角度の関係で近隣に反射するため、クレームになるケースがまれにあります」と言われたそうだ。
太陽光発電パネルの設置時に業者からは、日照時間の関係で北側に設置してよいか確認はあったそうだが「反射光の説明があれば無理に北側に設置せず、南側に設置した。トラブルになるなんて想像もしていなかった」とAさんは話す。

後悔しないためには事前準備が必要

太陽光発電で元をとるには設置時の初期費用を抑えることが重要であり、ランニングコストの算出、出口である将来の撤去費用等を加味しシミュレーションをしたうえで計画的におこなうことが、上手に太陽光発電を運用する方法ではないだろうか。
また、太陽光発電パネルを設置する目的は売電ではなく、自身で消費することによる節約を目的としたほうがお得感を得られるのだろう。目的を定め近隣に配慮しながら運用することが、太陽光発電パネルを設置するときの「覚悟」なのかもしれない。
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部

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