長渕剛が故郷鹿児島の病院に描いた壁画「僕が死んでも生き続ける」2輪のひまわりに込めた思い

長渕剛が描いたひまわりの壁画(Photo by Osamu Nagahama)
長渕剛が描いたひまわりの壁画(Photo by Osamu Nagahama)

長渕剛が描いたひまわりの壁画(Photo by Osamu Nagahama)
長渕剛が描いたひまわりの壁画(Photo by Osamu Nagahama)長渕剛(中央)が描いたひまわりの壁画(16日=鹿児島市の与次郎米盛クリニック)

長渕剛(66)がこのほど、ふるさとの鹿児島市内の「与次郎米盛クリニック」(米盛公治理事長)1階フロアに、巨大な2輪のヒマワリの壁画を描いた。既存物を避けて描いたため完全な長方形ではないが、最大で高さ約4・5メートル、幅6メートルに及ぶ大作だ。

赤青黄緑の原色を大胆に塗り、種を白で点描写した。太陽のように燃える2輪のヒマワリが、寄り添うように咲き誇る。そして「僕は 君のために ずうっとずっと 咲くよ」という言葉が書き込まれた。「1ではなく2輪であるということは、患者と先生、患者と家族が支え合うこと。命を救う現場にはお互いがいる。1人ではない」というメッセージが込められた。

長渕は音楽家だけでなく、画家、書家としても活躍する。絵画と長渕独特の言葉による詩画展は、全国で開催されている。

今回の壁画制作のきっかけは、2年前にさかのぼる。新型コロナウイルスが猛威をふるう中、長渕は20年10月に、東京・新宿の国立国際医療研究センターの屋上ヘリポートで、ギター1本でライブを行った。医療従事者を激励するためだった。

その同郷人の姿に、整形外科医の米盛理事長が深く感銘を受けたという。今年4月に移転・新築で「与次郎米盛クリニック」が新生する機会に、知人を介して知り合った長渕に「壁に長渕さんのメッセージを描いていただくことで、患者さんやご家族、さらには医療従事者が勇気をいただけるし、多くの方に喜んでいただけると思う」と依頼した。

長渕は近年「鹿児島に恩返しをしたい。故郷はいい思い出ばかりじゃないが、それを含め、帰って来ると一気に(記憶が)フラッシュバックする。でき得る限り、地域に貢献したい」と話している。その思いと、救急医療の最前線にも立ち地域医療に貢献する同クリニックの米盛理事長の思いが合致して、今回の壁画制作となった。

実は昨年9月に、長渕は自身が通っていた鹿児島市内の唐湊(とそ)幼稚園の壁に、サプライズでヒマワリの絵を描き話題となった。「コロナ禍でも前向きで元気な子供たちの姿を、自分が好きなヒマワリを通して描きたかった」と話した。米盛理事長はこのニュースを知っていて、「ヒマワリの絵を」とお願いした。

長渕には「ひまわり」(97年)というヒット曲がある。自分が風になって、東西南北の、渇きひび割れた大地に太陽に向かって咲くヒマワリの種を運びたい、と歌う名曲だ。

11月下旬の下見を経て、今月15日から3日間かけて制作に取り掛かった。診療に支障を来さないように、夜間に行われた。時には深夜にも及んだ。「自分がひと筆目を落とした瞬間に、全部を注ぎ込み、一気に仕上げていく」と話したように、集中して描いた。完成すると、スタッフ、関係者から大きな拍手が起きた。長渕は「建物と一緒に、僕が死んでも生き続けるんですね」と喜んだ。

「僕は 君のために ずうっとずっと 咲くよ」

長渕のすべての人に対するメッセージである。【笹森文彦】

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