尖閣諸島周辺の中国船対応 〝要衝〟鹿児島港谷山2区で給油施設、格納庫整備に着手 大型巡視船の機動力向上 海上保安庁

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大型巡視船の拠点化が進む鹿児島港谷山2区。岸壁には桟橋が2本整備され、1本は2022年3月に完成した=2020年11月、本社チャーター機から撮影)

【図解】鹿児島海上保安部の母港となる鹿児島港谷山2区

 【図解】鹿児島海上保安部の母港となる鹿児島港谷山2区

 海上保安庁は鹿児島海上保安部の母港鹿児島港谷山2区(鹿児島市七ツ島2丁目)で、給油施設(容量6000キロリットル)、ヘリコプター5機分の格納庫(2908平方メートル)・駐機場(4650平方メートル)の整備に着手した。中国船が領海侵入を繰り返す沖縄県・尖閣諸島周辺の警備強化に伴い、同港に配備が相次ぐヘリ搭載型大型巡視船の機動力を高める狙い。
 民間資金を活用した社会資本整備(PFI)を導入し、9月27日に民間10社のグループと事業契約を結んだ。事業費は2044年3月末までの維持管理、運営費を含め約110億円。現在は設計段階で、いずれも24年9月末の完成を見込む。
 東シナ海の領海警備は厳しさを増し、海上保安庁は鹿児島港を「海上警備の要衝」と位置付ける。巡視船の拠点化を進め、19年以降、ヘリ搭載型の大型巡視船「しゅんこう」「れいめい」「あかつき」を相次いで投入。鹿児島海保は7隻(1000トン級3隻、6000トン級4隻)を保有し、「尖閣専従体制」を敷く石垣海上保安部(沖縄県)の14隻に次いで多い。23年度には同港に大型巡視船2隻の追加配備も計画されている。
 同港には民間から借り上げた岸壁に大型巡視船2隻が同時係留できる桟橋が22年3月に完成。23年度中に新たな桟橋の完成も見込むが、給油施設はない。
 現在は民間に依頼して燃油を積んだバージ船(荷船)をピストン輸送したり、県外の大型バージ船をチャーターしたりして給油。日程調整や輸送に時間がかかり、海上保安庁幹部は「尖閣諸島周辺などで不測の事態も想定される海域を預かっており、すぐに燃料補給できる環境が必要」と整備の意義を説明する。
 ヘリ格納庫を設けることで、搭載ヘリの点検、整備の効率化を図る。組織の強化も進め、23年度予算の概算要求では、鹿児島海保が所属する第10管区海上保安本部に巡視船の整備・修理を担う船舶技術部の新設が盛り込まれた。
 10管の坂巻健太本部長は「全国で10管が体制強化の中心になっている。鹿児島港谷山2区を最大限活用し、外国船舶の監視警戒に冷静かつ毅然(きぜん)と対応したい」と話した。

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