特攻作戦の爪跡残る「鹿屋の戦争」デジタル地図化 戦跡、文献、体験談を集約 慶応大教授ら一般公開

慶応大の安藤広道教授らが作成した鹿屋の戦争アーカイブマップ

 慶応大の安藤広道教授らが作成した鹿屋の戦争アーカイブマップ

鹿屋の戦争情報を集めたアーカイブマップを紹介する慶応大の安藤広道教授=18日、鹿屋市中央公民館

 鹿屋の戦争情報を集めたアーカイブマップを紹介する慶応大の安藤広道教授=18日、鹿屋市中央公民館

 鹿児島県・鹿屋の戦争遺跡を研究する慶応大学の安藤広道教授(考古学)と鹿屋市平和学習ガイド・調査員連絡会が、太平洋戦争にまつわる地元の戦跡や文献、体験談などの情報をデジタル地図上に集約したアーカイブマップを作成した。18日から一般公開し、平和学習などでの幅広い活用を呼びかけている。
 ガイドらによる戦争体験者への「聞き取り」、掩体壕(えんたいごう)やトーチカといった「戦争遺跡」、南日本新聞が2006年から連載する「語り継ぐ戦争」など、種類別のアイコン約200個が、関連した場所に表示される。クリックすると、それぞれの概要や写真、リンク先が分かる仕組みだ。1年以上かけて作った。
 航空特攻の現場指揮を執った旧日本海軍第5航空艦隊司令部壕など、普段は入ることができない壕内の360度画像や、地元図書館だけに残る文献なども収集して公開。1945(昭和20)年の終戦目前、米軍が空撮した基地の白黒写真を活用したページもある。
 マップは更新を続け、数年かけて垂水、志布志、肝付など鹿屋市周辺市町の情報も拡充させる予定だ。
 安藤教授は「マップを作ることは、埋もれた記録や遺跡を再度洗い出すきっかけにもなる。大量の情報と場所が結びついているので、平和学習や地域巡りなど、さまざまな目的で活用してほしい」と話した。
 18日、鹿屋市中央公民館であった地元の戦争を学ぶ集会で紹介された。資料を提供した平和学習ガイドの小手川清隆さん(69)は「遺跡をただ見て回るより、スマホを片手にマップを参照することで理解に深みが出るはず。形になってうれしい」と話した。
 マップ作成では南日本新聞社も情報提供に協力。同社ホームページからアクセスできる。
■鹿屋の戦争
 1936(昭和11)年に海軍航空隊が創設された鹿屋市では、太平洋戦争中に三つの基地(鹿屋、串良、笠野原)があった。鹿屋と串良は戦争末期、特攻隊の基地となり、沖縄航空特攻で多くの特攻機が出撃した。終戦後、航空隊跡に警察予備隊が入り、現在の海上自衛隊鹿屋航空基地へ。2022年11月からは米軍の無人偵察機MQ9部隊が一時展開している。

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