「農業王国」鹿児島、稼ぐのは苦手だった…食料品製造業の収益率が全国最下位

曽於市にある「日本一」と書かれた牛衣をまとう和牛像

 曽於市にある「日本一」と書かれた牛衣をまとう和牛像

九州7県で比べても鹿児島の「稼ぐ力」が低いことがよく分かる図

 九州7県で比べても鹿児島の「稼ぐ力」が低いことがよく分かる図

 鹿児島県の食料品製造業は九州2位の出荷額を誇るが、付加価値を生み出す「稼ぐ力(収益率)」は全国で最も低い-。国が昨年末に公表した経済センサス活動調査から、こんな結果が浮き彫りになった。特に主力を担う食肉関連の「稼ぐ力」が低く、全国屈指の畜産県としての強みを十分引き出せていない実態が読み取れる。
 経済センサス活動調査は「経済分野の国勢調査」と位置付けられ、5年に1度実施される。昨年12月26日に2020年実績を対象にした製造業の詳細が公表され、都道府県ごとの品目別出荷額、付加価値額などが明らかになった。
 県内食料品製造業の出荷額は、九州では福岡県(1兆396億円)に次ぐ7147億円に上る。畜産産出額で全国2位の産地らしく、牛・豚・鶏を中心にした食肉関連で3996億円を売り上げた。
 粗利益に当たる付加価値額も1572億円で九州2位。ただ、収益率は22%(鹿児島を除く九州6県34%、全国35%)にとどまり、九州だけでなく全国でも最下位と振るわない。
 食肉関連に限ると、14%とさらに下がる。他県に比べて部分肉・冷凍肉製造の比率が高く、ハムやソーセージといった高次加工品の出荷が少ないことなどが要因のようだ。
 全国を見渡すと、地域の主要農産物をベースにした加工品製造で成果を出している産地もある。米産出額全国トップの新潟県は、ほかの米産地が1次加工の精米業に注力する中、より商品性の高い米菓製造に特化。米菓だけで1224億円の付加価値を生み出し、こちらも「日本一」を誇る。
 新潟県の米菓製造業は、官民が連携して技術革新に取り組み成長してきた経緯がある。農業県・鹿児島の存在感をさらに増すには、1次加工品だけでなく、消費者をターゲットにした商品開発の拡大が鍵となりそうだ。

コメント