毛布は掛け布団の上か下か?寝具内にひそむ"気候"と効率的な寝具の使いかたを気象予報士が解説!

間接照明の寝室とベッド

冷え込む季節、眠るときは朝まで体を冷やさず快適にすごしたいものです。
冬場は掛け布団1枚ではなく毛布と組み合わせて使う人が多いと思いますが、毛布を掛け布団の下にするか上にするか、迷った経験のある人もいるのでは?
じつは専門家によると、賢い布団の使いかたのカギを握るのは、”気候”だというのです。
今回は、気象予報士・防災士・野菜ソムリエとして活躍する植松愛実さんに、冷え込む季節に知っておきたい、布団の中の”気候”について解説してもらいます。

「寝床内気候」とは

布団で眠る女性

寝具と人との間の空間における気温や湿度の状態を「寝床内気候(しんしょうないきこう)」と言います。
通常、気候という言葉は「東北地方の気候」や「地中海性気候」という具合にかなり広い範囲において使うので、それらに比べるとかなりミクロな気候です。
この”気候”は、だいたい気温33度前後、湿度が50%前後だと人は快適に眠れるとされています。
これだけ聞くと単純な話のようですが…、実際にこの”気候”にたどり着き、さらに朝起きるまで保つことは容易ではありません。
そのため様々な研究者やメーカーが、被験者に協力してもらって大規模なアンケート調査を行ったり、発汗サーモマネキンと呼ばれる特殊な人形を使って温度・湿度を計測したりして、論文も多く出されています。
逆に言うと、そこまで深く研究する必要があるくらい、寝床内気候は奥深い世界なのです。

「温度」だけ考えるなら「毛布が上」

寝室のベッドと布団

テレビやネット記事などで、「掛け布団の上に毛布をかけたほうが温かい」という情報を見たことがある人はおそらく一定数いるのでは。
実際、ある一時点における温度だけを単純に考えると、下から体→掛け布団→毛布のパターンがもっとも高い温度になります。
ただ…問題は、「気候」を考える上では一時点の温度だけでは足りません。その温度がちゃんと保たれること、そして温度とともに湿度も快適な状態であることが必要なのです。

保温と湿度調節を担う寝具

積み重った寝具

たとえば掛け布団が羽毛・羽根布団である場合は体にフィットしやすい(専門的には「ドレープ性がある」)ため、布団が体に直接触れているほうがよく、前述のとおり体→掛け布団→毛布が最適。
一方で、綿でできている場合など体に沿った変形がしにくい場合は、毛布が下のほうが保温効率がよくなります。
ただ、掛け布団が羽毛布団や羽根布団の場合でも組み合わせる毛布が非常に重いタイプの場合、布団がつぶれてしまって本来の性能を発揮できないため、毛布が下のほうが最終的には効率がよい場合もあります。
そして湿度の面では、綿やウールなどは湿度調節がしやすい一方で、ポリエステル100%など湿度調節がしづらい素材の寝具は、あまり肌に直接触れない位置で使うのがおすすめ。
掛け布団と毛布とで素材が異なる場合は、素材を基準にすると快適性がぐんと上がります。
なお、毛布については掛けるのではなく敷くことでかなり温度を上げることができるので、毛布と掛け布団の上下を調整してもまだ寒いという場合は試してみてください。

自宅の寝具に合わせて最適な組み合わせを探ろう

布団の中からピースサイン

快適に眠りに入り、そして朝までそれを保つには、単純に「掛け布団」「毛布」とひとくくりにするのではなく、それぞれの素材や重さ、厚み、やわらかさなど自宅にある寝具の個性に合わせて調整する必要があります。
また、さきほどポリエステル100%の掛け布団だと湿度調節がしづらいと書きましたが、最近ではアクリルのような化学繊維でも湿度調節機能に優れた素材のものが売っているため、新しく購入する際はそういった点に注目するのもおすすめです。
これから特に冷え込みが厳しくなる中、最適な組み合わせを探って快適な眠りを手に入れましょう。

■執筆/植松愛実さん

気象予報士と出張料理人の両面で活動中。気象・防災に関するヒントのほか、野菜ソムリエ・食育インストラクターとしておいしい食材のおいしい食べ方を発信中。Instagramは「@megumi_kitchen_and_atelier」。
編集/サンキュ!編集部

コメント